三章:真夜中の来襲者

10/31
前へ
/115ページ
次へ
   扉の周囲にスイッチの類いはなし。残念ながら爆弾の類いも所持してません。   「あのー。これ、どうやって開いたらよいのです?」    お手上げです。後ろを振り向いて尋ねますが、既にエントランスでは戦闘が始まっていました。    目にも止まらぬ斬撃を放つリーレンさんと、それをヒラヒラと紙一重で避けていく着物の少女。    いつ互いの首が飛んでもおかしくはない、白熱しながらも殺伐とした戦闘です。    とても話ができるような雰囲気ではありません。   「えー……」    再び隠し扉へ向き直る。はてさてどうしたものか。    暗号とかですかね。……はあ、なんか面倒です。    急がなくてはいけませんし――覚悟を決めるとしましょう。    私は深く息を吐き、吸います。そして、   「とう!」    思い切り扉を蹴りました。容赦ないヤンキーキックです。    扉を粉砕せんと放った攻撃。ですが、手応えはありませんでした。   「へっ?」    ――そう。皆無と言っていいほどに。    抱いた違和感、その原因を知る暇もなく、バランスを崩します。    蹴ったのは扉の右端。それがいけませんでした。    扉が勢いよく回転し、私はそこへあっという間に巻き込まれます。    一寸先は闇と言いますが、扉を通ればそこは真っ暗。さらには床がないことで闇を表現するという、念の入れよう。   「どこの忍者屋敷ですかー!?」    当然、成す術なく落ちていきます。    誰ですか。階段がある筈とか言ったのは……。  
/115ページ

最初のコメントを投稿しよう!

98人が本棚に入れています
本棚に追加