三章:真夜中の来襲者

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   左右の幅は徐々に狭まっているのか、階段を降りていくと最後には人一人分ほどのスペースになりました。    この狭さなら、チラリズムも納得です。    壁に手を付きながら、さらにペースアップ。ほどなくして、階段を降りきりました。   「これで終わりですね」    小さく呟いて、足で様子を窺います。問題ありません。しっかりした平面な床です。    よし。記憶が正しければ、右に行きましたよね。    曲がり角らしき場所に手をかけ、右方向を見つめます。……いました。暗闇に光が揺れています。    剣とハンマーをチェック。大丈夫。突撃しますか。    恐怖はありません。敵なら……叩きのめす。手は抜かないようにしましょう。    覚悟を新たに。右へ曲がります。そして揺れる光を、気づかれないように尾行。静かに接近を試みます。    やはり、人です。光に照らされているのは、人の形に見えました。人の前に光があるからか、影のように真っ黒です。    それが明らかに見たことがあるシルエットなんですけど、敵だったら戦うことになりますし……。どうするべきでしょうか。    ううむ。まあでも、敵なら遅かれ早かれ戦うんですよね。今見つかっても変わりないでしょう。    うん、そうですね。ならば……。   「フルスさん!」    私は自分の予想した人物の名を呼びました。口に手を沿え、大きな声で叫びます。    光を持った人影は立ち止まり、私へ方向転換。姿が露になります。   「ロウ!? なんでここに?」    予想的中。前を歩いていたのは、普段着のフルスさんでした。昨晩持っていたランプを手に、私を驚いた様子で見ています。    敵ではありませんね。私はホッとして駆け出します。   「それは勿論愛してるからですよ!」    そのまま、再会した恋人のように抱擁を――   「真面目に言いなさい」    ――する前に拳が激突。    いやぁ、人間って本当に馬鹿ですよね。中々学習できないんですから。え? 私が馬鹿なだけ?   「リーレンさんに教えてもらいました!」    戦闘の章だというのに、ついふざけてしまいました。カウンター気味に叩かれてから、シュビッと素早く敬礼して告げます。  
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