三章:真夜中の来襲者

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   するとフルスさんの表情に不満めいたものが浮かびました。   「リーレンに? なんでリーレンはこっち来ないのよ」    深くため息を吐き、私を見ます。   「こっちの方が重要なのに、なんでロウ……」    ほう。戦力にならないと言いたげですね。    何故私がここに送られたか……それは私が聞きたいですよ! というかこっちの方が重要なんですか! それすら初耳ですし、尚更リーレンさんの意図が分からなくなってきました。    初めは着物の少女が強いから、とかだと思ってましたが、何故リーレンさんはあんな命令を出したんでしょうね? 私を着物の少女と戦わせて、時間稼ぎに切り捨てた方がよっぽど利口でしょうに。    疑問は尽きませんが、一つ言っておきたいことがあります。   「語尾にロウは斬新なキャラ過ぎだと思いますロウ」   「語尾にしてないわよ! あなたの名前でしょ!」    分かってます。反響するほどの大声でツッコミをするフルスさんを見て、私は微笑みました。ああ、やはりフルスさんのツッコミは良いものです。   「さて。ツッコミも見れまし、真面目に一つ訊きます」   「最初から真面目にしなさい……。で、なに?」    額に手を当てていたフルスさんは、髪をかき上げます。いつものキリッとした目で私を見ました。   「地下に何があるんですか?」    私が尋ねるとその目は、一瞬大きく開かれます。    動揺。その様子がたった少しの時間で、多分に伝わりました。    問いかけられて当然の質問に慌てる。しっかりしたフルスさんらしくない。    何かあるとみて間違いありません。   「フルスさん?」    聴き込みをしつこくする粘着質な警察の如く、私は力強く彼女を見つめます。   「……異世界から来たあなただから言うわ。他のみんなには内緒よ?」    観念したように言って、フルスさんは折れました。    商会のお屋敷、その地下に眠る何か。誰かに襲われるほどのそれは、果たしてどんなものなのでしょう?    期待が膨らみます。財宝とか、全財産とか、貴重な素材とか……ファンタジーですからね。壮大なものでしょう、きっと。    ごくりと唾を呑み、私はフルスさんの言葉を待ちます。彼女は一言、短く言いました。   「神の遺産よ」    壮大すぎ……じゃないでしょうか。  
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