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俺達はこの街にずっといる。
だから街についてはなんでも知っている。
街にいる人も
いた人も
俺達が原因で帰ってこれなくなった人も。
「…ねぇ、紅葉」
「んん?」
「いつまで買い物する気?」
紅葉の鞄はいっぱいいっぱいになってしまった為、駄菓子屋で買ったものを食べながら歩いている。
「……流石に買いすぎた?」
「主に食べ物だしね」
どうやら大食いらしい。随分痩せているけど。
「…もう夕暮れ…か…」
夕日が街を朱く照らす。
「…紅葉。別の場所に行こうよ」
「えー…まあいいかな。こんなに買ったんだし」
「今度は景色が綺麗なところに連れてくよ」
「うん」
「着いたよ」
「……うわぁ………」
一面に彼岸花が広がる野原。
夕暮れの時が一番綺麗だ。
「ここでさっき買ったものを食べていい?」
「いいよ」
鞄から沢山の食べ物。
しかし紅葉の手にかかるとあっというまに平らげてしまう。
「………」
今は綺麗な彼岸花も、もうすぐで枯れてしまう。
この子も、いつかは居なくなってしまう。
また、俺の前からみんな消えていってしまう。
「……千秋…?」
「ん?」
「千秋は…まさかあの時の…」
狐さん?
狐。
「…!……どうして?…」
どうして紅葉は悟ってしまうんだろう。
あんなに小さなときなんだから覚えているはずないのに。
「…私は、今日、千秋に伝えておかないといけないんだ」
「何を…?」
「…おばあちゃんが、居なくなったんだ」
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