少女と狐

8/11
前へ
/11ページ
次へ
少女(紅葉)目線。 「おばあちゃん…どこ…」 怖い。 独りきり。 通る人は私を呼び止めようとするが、それを無視して歩く。 「おばあちゃん……おばあちゃん……」 「キミ、どうしたの?」 そんなとき、1人の男の人が目の前に立っていた。 威圧感は全くないし、怪しい人でもなさそうだった。 「迷子?誰の子かな?」 「おばあちゃん…」 「おばあちゃんの名前は?」 「椛(もみじ)…」 「…ふーん。じゃ、行こっか」 「…?」 「おばあちゃんのところに、連れていってあげる」 「おばあちゃん!」 「紅葉!よかった…無事で…」 おばあちゃんのところで安心する自分。 男の人は何も言わずに立ち去ろうとしていた。 「千秋。ありがとうね」 おばあちゃんがそういうと、千秋と呼ばれた男の人はこちらを向く。 「…約束。守ってあげただけだから」 千秋はそういうと強い風が吹いた。 思わず被っていたお気に入りの帽子をおさえる。 すると、彼は居なくなっていた。 「紅葉、貴方は私があの人と約束したから何があっても守ってくれるから、何かあったらこの街に来なさい」 約束とは、どんなに重いものなのか知らなかった。 この約束は、命を懸けた約束。 私は身体が生まれつき弱い。 おまけに父親は大手財閥の当主。 さらに、私は狐達にとって好物の夏椿を持つもの。 狐達に何かを守ってもらう代わりに、誰もが持っている人の命、椿を差し出す。 狐達には人の命は椿の花に見えるらしい。 それは狐が不思議な力を使う糧となる。 おばあちゃんは自分が亡くなった時、狐である千秋に言うように言われていた。 そんな、小さい時にあった自分の記憶。 「千秋…おばあちゃんはここにいるよ」 「いないじゃん」 違うよ。 「この彼岸花の野原の下にいるよ」 此処が、おばあちゃんのお墓なんだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加