少女と狐

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少女(紅葉)目線。 「おばあちゃん…どこ…」 怖い。 独りきり。 通る人は私を呼び止めようとするが、それを無視して歩く。 「おばあちゃん……おばあちゃん……」 「キミ、どうしたの?」 そんなとき、1人の男の人が目の前に立っていた。 威圧感は全くないし、怪しい人でもなさそうだった。 「迷子?誰の子かな?」 「おばあちゃん…」 「おばあちゃんの名前は?」 「椛(もみじ)…」 「…ふーん。じゃ、行こっか」 「…?」 「おばあちゃんのところに、連れていってあげる」 「おばあちゃん!」 「紅葉!よかった…無事で…」 おばあちゃんのところで安心する自分。 男の人は何も言わずに立ち去ろうとしていた。 「千秋。ありがとうね」 おばあちゃんがそういうと、千秋と呼ばれた男の人はこちらを向く。 「…約束。守ってあげただけだから」 千秋はそういうと強い風が吹いた。 思わず被っていたお気に入りの帽子をおさえる。 すると、彼は居なくなっていた。 「紅葉、貴方は私があの人と約束したから何があっても守ってくれるから、何かあったらこの街に来なさい」 約束とは、どんなに重いものなのか知らなかった。 この約束は、命を懸けた約束。 私は身体が生まれつき弱い。 おまけに父親は大手財閥の当主。 さらに、私は狐達にとって好物の夏椿を持つもの。 狐達に何かを守ってもらう代わりに、誰もが持っている人の命、椿を差し出す。 狐達には人の命は椿の花に見えるらしい。 それは狐が不思議な力を使う糧となる。 おばあちゃんは自分が亡くなった時、狐である千秋に言うように言われていた。 そんな、小さい時にあった自分の記憶。 「千秋…おばあちゃんはここにいるよ」 「いないじゃん」 違うよ。 「この彼岸花の野原の下にいるよ」 此処が、おばあちゃんのお墓なんだ。
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