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俺と智治の馬鹿なやり取りを見て少しは元気になってくれたのだろうか。
千恵は鈴を転がすような声で笑うと、キリッと鋭い視線を小さな男に向ける。
「おお、良い目だね♪」
千恵の視線の先に居るそいつはそれを見て興奮したような声を上げた。
「じゃ~ズバッと答えてみよぉ~!
山本千恵ちゃん、ズバリ貴女はこの戦いにおいてなにが欲しい?」
「私は……光……光が欲しい。
暗くて寒い闇を暖かく照らす光。
みんなを照らす希望の光」
千恵は胸の前で両手を握り、静かにそう言い放った。
なんか……かっけぇ……
「はいは~いっ!」
小さい男が喧しく返事をすると、もう一度その隣に光が灯る。
流石に三度目になると見慣れたものだ。
……慣れってこえぇ。
「って言うか千恵ちゃんって結構詩人だね♪
ぷふぅっ!」
小さな男が茶化すようにそう言うと、千恵が顔を真っ赤にさせて俯いた。
あいつすげぇぶっ飛ばしたい。
いや、マジで。
超殴りたい。
俺が静かなる業火をめらめらと燃え上がらせていると、灯っていた光がふわりと消え失せる。
その中から出てきたものに俺達は一瞬言葉を失った。
それは、人でも、ましてや武器でもなかった。
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