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それに同調するみたいに俺の心もざわつき始めた。
父さんと母さんは無事なんだろうか――
言い知れない不安が喉を詰まらせて胸が苦しくなる。
そんな俺の心境を写し取ったみたいに至るところから家族の心配をし始める人が続出した。
みんな口々に家に帰りたいと言っている。
ステージ上の男もこれじゃ会議になんないと思ったんだろう、体育館の時計と自分の持ってる携帯とを見比べてまだ生きている事を確認すると、おもむろに拡声器を持ち上げた。
「あーわかった、じゃあ今十時二十五分だから……そうだな、一時ぐらいでいいか?
そんくらいから会議を始める。
会議はその場にいるやつらで勝手に進めとくから別に遅れても構わない。
そんなわけで、まぁ一旦解散?」
男がそう言うとまるで蜘蛛の子を散らしたみたいにみんな体育館から出ていく。
俺も両親が心配だ、早く行かねば……!
そう思ってたんだけど誰かに腕を掴まれて動きが止まった。
なんだと思って首を捻ると、俺の腕を掴んでいたのは智治だった。
「なんだよ」
不安に駆られてついぶっきらぼうな声が出た。
「行かない方がいい」
なんだよその残念そうな言い方……止めろよ……
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