50人が本棚に入れています
本棚に追加
教室へ着くなり、教室にいたクラスメートの一部が昇の周りに集まってきた。
その様子を見た司は、昇に向かってウインクをし、自分の席に着いた。昇は“悪い”と顔の前に手を持ってきた。
「昇君、昨日大丈夫だった?」
「え?………
あぁ……
全然大丈夫だけど……」
「それはそうと、昇知ってるか?」
「え?何をだ?」
「昨日、昇をさらったあの『風霧団』の捕まってなかった奴らが、『鬼龍団』の協力のお陰で、全員捕まったんだってさ!」
「え?!」
「しかも、それをやったのが『鬼龍団』の総長なんですって!」
「す、スゲェな………」
「…………
金田君」
「?」
ミステリアスな声で昇を呼んだのは、今まで自分の席で本を読んでいた少女だった。
彼女の名前は、夏川香織(ナツカワカオリ)。
無口で何を考えているか分からない、読書好きな少女。
“周りなんて、どうでもいい”という感じの目をしているため、周りからは少し嫌われている。
香織は読んでいた本を閉じ、ゆっくりと昇に近付いてきた。
「な…何だよ、夏川」
「…………
あなた、何か隠してる?」
「え?」
「例えば………
『鬼龍団』の総長を見た……とか?」
「!!」
その言葉に、昇は驚きを隠せないでいた。
“ガラガラ”
「何やってんの。みんな席に着きなさい!授業始めるわよ!」
教室の扉が開いたと同時に担任の仲居が入ってきて、まだ席に座っていなかった生徒に向かって手をたたきながら、教卓へ向かった。
最初のコメントを投稿しよう!