50人が本棚に入れています
本棚に追加
小雨が降る夜………
雨の音で司は目を覚ました。まだ熱があるせいか、意識が朦朧としていた。
司は頭を抑えながら、布団から起き上がった。ふと枕を見ると枕に敷いていたタオルが少し濡れていた。司は自分の顔を手で触った。
顔は汗で濡れ、さらに目から涙が流れ出たのか目元も濡れていた。
(…………
雨が降っていたから………
あんな夢見たのか……)
夢の事を思い出した司………
父親が何かで撃たれたと同時に、雨が降り出した。撃たれた場所から何かが飛び散り、それは司の体に付いた。目の前で父親は撃たれた場所から血が流れ出て、仰向けで倒れていた。
夢はそこで終わった。司は膝を抱えしばらく窓の外を眺めた。
「司………」
「?」
自分の名を呼ぶ声がし顔を向けた。いつの間にか襖が開き、そこには部屋着姿の茜が涙を浮かべながら立っていた。
「母さん?どうし」
「司!!」
司が茜に話し掛けようとした途端、茜は司に抱き付いた。司は訳が分からず抱き付いた茜に顔を向けた。
「良かった………
本当に………」
「母さん、どうかしたの?」
「あんた、3日間ずっと熱で魘されてたのよ」
「え?うちが?」
「そうよ!
でも良かった本当に……」
「…………
母さん」
「?何?」
「…………
今更言うのもなんだけど………
父さんはもう………
帰って来ないの?」
最初のコメントを投稿しよう!