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「いつもの事じゃねぇか」
「こっちはさっさと帰りたいのよ」
「だったら、1人で帰れば良いじゃないか………
ま、さらわれても良いって云うんならばだけど………」
「…………
それじゃ、帰らせて貰います」
翼が言い放った言葉が、かんに障ったのか香織は自分の席へ行き、ランドセルを手に持ちながら教室を出て行った。
「お、おい!夏川!
谷本!」
「ん?」
「お前もお前だ!あんな言い方しなくても、良いじゃねぇか!」
「そんなに、あいつが気になるなら……
君もあの子と一緒に帰れば良いじゃないか………」
そう言いながら、翼はまた本に目を移した。昇は翼に対する怒りを抑えながら、自分の席へ行きランドセルを手に取りか香織の後を追った。
(…………
バカな奴ら……)
本を持つ翼の手は、2人が出て行った後少し震えていた。
フラッシュバックで映る、翼の幼き過去………
目の前で誰かが、刃物で胸を切り裂かれ返り血を浴びた幼き翼の姿………
(…………)
山に沈む太陽の光が、翼の顔を照らした。翼の顔には光の反射からか、水滴が光った。
ランドセルを背負い、苛立ちながら商店街を歩く香織とその後を追う昇………
「いつまで、付いて来るのよ」
「1人でこんな所、歩いたら危ねぇに決まってんだろ!」
「ふ~ん………
じゃあ金田君は、私の家まで付いて来る気?」
「ま………
そうなるな………」
「昇?」
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