鍵屋

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「お、お、落ち着け、落ち着けあたし。」 明らかに落ち着ける状況ではないし、落ち着いている様子もないが、声に出してみた。 「ま、まず、まず、ままままず、お、落としちゃったのかも、、しれないし…」 うんうんと自分で頷き、同意する。 「この下から、捜してみよう」 そう決めて、急降下した。 雨の強さは相変わらずで、ぐっしょりと濡れた羽や衣服からは水が滴る。 それでも、このまま落としちゃいました、えへ、と帰るわけには行かない。 だって、あれはすごく高い。 右京の頭の中にどっしりと居座っているその言葉は、彼女にとって何より重い。
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