第1章 おまじない

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全力で自転車を漕ぐ。 いつもの坂道を上り、一気に下る。 朝は車の通りが少ないこの広い道路の真ん中を走ることで今日の始まりを感じる。 するとその時… 「…あ!」 キキーッと自転車を急停止。 空を見上げる。 「飛行機雲だ!」 じっとその飛行機雲を見つめる。 (今日はなんだかいいことありそうだなあ…) そんなことを思いながらまた自転車をこぎ始めた。  ◆ ◆ ◆ 学校に到着し、駐輪場に自転車を止めた。 かごからエナメルバッグを取り出して歩きだそうとした。 その時、 「空ー!」 「…!」 振り返ると、その人は自転車に乗って颯爽と現れた。 「おはよ! 今日はちゃんと起きれたんだなあ」 自転車を止めながら声をかけてくれる。 「入学して1カ月、水瀬 空(みなせ そら)もう遅刻はしません!」 胸を張って言うと、大笑いされる。 「いつまでもつかな? 中学ん時遅刻魔だったくせに!」 「そ、それは昔の話ですから!」 過去のことを思い出して思わず顔が熱くなる。 「はは、まあ無理すんなよ! しんどくなったら休め。」 そう言って先輩は私の頭をポンポンと撫でた。 「うちのバスケ部は毎朝早いからなー」 そんなことを言いながら先輩は体育館の方へ歩いていく。 そんな先輩の背中を見て、撫でてくれた場所に触れる。 (…やっぱり、好きだなぁ) そんなことを思っていると… 「ん? 空、いかねーのか?」 「あ、行きます行きます!」 そう返事をして先輩のもとへ駆け出した。
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