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みんなは静まり返る。
そして…
「…ぷっ、くくく」
円が思わず吹き出す。
「もう!
またあんたは真面目くさってそういう話するんだから!
幽霊だの精霊だの悪魔だの、そんな非現実的なものいる訳ないじゃない」
笑いながら円が言うと優理も頷く。
「そりゃそうよね。
まあ空、地道にかつ効果的なアプローチをしていきなさいよ!
…さ、次移動だから行きましょ!」
優理はそう言って話を終わらせると立ち上がった。
その背中を円が追う。
亜理沙と空は二人になった。
「…12時」
ボソッと亜理沙はつぶやいた。
「日付が変わる、ちょうど12時に全身が映る鏡の前に立ち、自分の願い事を唱える。
ただそれだけ。
あとはきっと悪魔が現れたら説明してくれる…」
「…あの!」
思わず亜理沙の言葉を止める。
「…亜理沙ちゃんは悪魔を信じてるの?」
恐る恐る様子を伺うと、亜理沙は凛とした態度で前を見ていた。
「…信じなければ、彼らは存在しなくなってしまう。」
「…え?」
「…死んでもなお罪人として生まれてしまった者達。
死ねば解放されると思っていた罪悪感を胸に、
新たな人生を歩むため、
人の役に立つため、
そんな存在意義をもって生まれてきた。」
また風が二人の間を吹き抜けていく。
「けれど、私達人間が彼らを欲さなければ彼らは存在意義を果たせなくなってしまう、
つまり…」
亜理沙は空を真っ直ぐ見つめる。
「存在価値がなくなる。」
「…!」
「…それは、とても悲しいこと。
そんな脆く、儚い『悪魔』を…
私はせめて、信じてあげたい。」
目を瞑ってそう言う亜理沙に空は自然と見いった。
「…私には彼らを欲する理由がない」
「!
亜理沙ちゃんは願い事ないの?」
素直にそう聞く空を亜理沙はジーっと見つめた。
そして優しく微笑む。
「私の一番の願いは叶った。」
「…え」
キーンコーンカーン…
「…!
やばっ!
遅刻しちゃう」
「行こう」
そして二人は走り出した。
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