終章

3/5
前へ
/228ページ
次へ
スペインでの二人の生活は とても裕福な暮らしではなくて‥ それでもマコは持ち前のド根性でスペイン語を学び 近くの市場で働いてくれた‥ マコは旦那から貰ったド根性だと笑いながら自慢気に話してくれていたけれど‥ 俺は旦那に感謝しつつも 少しヤキモチを妬いていた事を知ってたか‥? その度に俺は もっと強くなりたいと思った。 マコの旦那譲りのド根性に負けないくらいもっと強く‥ でも‥ マコの本当の強さを知ったのは 子供達が出来てからかも知れない。 スペインで暮らし始めて 1年が経った時‥ 俺達に 待望の赤ちゃんが出来た。 俺はまだその頃 高校で臨時職員として 美術講師をしていたが 給料は安く‥ 二人の生活ならまだしも 生まれてくる赤ん坊の為を思うと美術や芸術にこだわらず 安定した職を‥と 転職を考えていた。 しかしマコは 芸術の世界を捨てないで! お金にならなくてもいい! 何でもいいから芸術に関わる事をして! と‥俺のサラリーマンへの道を断固として拒否をした。 そしてお腹が大きくなっても 市場で働き続けた‥ 俺も夜の仕事を始め もう頼むから家に居ろ。 と言っても聞かず‥ この頑固さは旦那譲りではなくマコが持って生まれた物らしくとうとうマコは市場で 産気づいて病院に運ばれた。 俺は自転車のサドルに一度も尻をつける事なく猛スピードで病院へ向かい 顔面蒼白の俺にマコは‥ ごめんね… もう産んじゃった♪ と言って笑った。 その笑顔は‥ もう既に母親の顔で‥ コイツにはかなわない‥。 そう思った。 マコは子供を産む度に どんどん強く どんどん輝きを増していった。 だから俺も強くなれた。 本当に色んな事があったけど マコが言った通り 俺はサラリーマンではなく 芸術の世界で食べていける様になり‥ 日本の大学で講師をさせて貰える様にもなり‥ 最後はマコと二人で 日本で暮らせた。 そして‥ 俺とマコが出逢ったあの街で マコは旅立った。
/228ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2772人が本棚に入れています
本棚に追加