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【赤松かほるの場合】
宮部かほる36歳。
(旧姓:赤松かほる)
旦那 宮部有(たもつ)31歳。
(通称:ユウ)
長女 菜々子6歳。
次女 実果子3歳。
それは結婚8年目の出来事…
宮部青果店にとって…
私達家族にとって…
ターニングポイントと言える
出逢いがあった。
この出逢いをなくしては
今の宮部青果店の栄華はナイと言っても過言ではナイだろう…
一番始めの出逢いは…
子連れの主婦ならよくある
フツーの出逢いだった。
「イィヤァァァァーーっ!!!」
待合室にまで響き渡る子供の泣き声にクスクス笑う人もいたけれど…
私は他人事じゃなかった。
「大丈夫…。大丈夫だから‥
一瞬チクッってするだけ。
ね？実果…頑張ろ！」
すでに実果はぶるぶると首を振って涙ぐんでいる始末。
そう今日は次女の予防接種を受けに病院に来ていたのだが…
実果は大の注射嫌いで‥
今、中で泣き叫んでいる子にも負けてはいないと思う。
「頑張ったね‥キオト。
エラいエラい♪」
「ぅん‥キオト‥
頑張った‥」
多分‥さっきの子だろう‥
お母さんの胸に顔をうずめて
ゴシゴシと涙を拭いていた。
そしてもう一人‥
お母さんの手をしっかり握っているお人形さんみたいな女の子がいた。
双子だろうか？
その子もまた注射をしたのだろうけど
涙ひとつ流した形跡がなく‥
「大丈夫だょ♪一瞬だけだょ♪それにイタい時はイタいって言って泣いてもイイんだょ♪
‥ってオットーが言ってた♪」
と‥ニコっと笑って
ぶるぶるしている実果に話しかけてくれた。
「一瞬だけ‥イタかった‥？」
実果がぶるぶる震える声で尋ねると‥
「ぅ～ん‥ブロック踏んづける方がイタいし‥ジャングルジムから落っこちる方がイタいし‥クワガタに挟まれる方がもっとイタい♪」
お人形さんみたいな少女の口からとても想像出来ない答えが返って来て‥
思わず私も実果も微笑んだ。
「ねっ♪キオト♪
クワガタの方がもっとイタいよね♪」
「ぅん！クワガタの方が
もっとイタい！
オットーも泣いてたもん♪
ね？オッカー♪」
さっきまで泣いていた男の子もニコっと笑った。
天使みたい‥
そう思った。
実果はきっと‥
この天使みたいな二人に
勇気を貰ったに違いない。
実果は…
生まれて初めて注射をして
泣かなかった。
そしてそれが
実果の自信にもなった。
子供って‥スゴいな…と
改めて思った。
コレがあの
“Moonscape”KIYO一家との
一番始めの出逢いだった。
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