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 再び走り始めた車は、緑のアーチに差し掛かった。角度が増した陽射しが葉脈を透かせども、手を携えあう葉の隙間から零れ、黒いルーフに光の網をかける。 「パークウェイか……」  皇甫は、フードを指先でわずかに持ち上げて、車内から木々の彩りを見上げた。 「ああ」と、トムも目を細める。「車でいけるとこまで行く。そこから先はもう、砦の領分だ」 「U.S.にもまだ緑が残っていたんだな」 「崩壊前から都市と自然環境の研究特区だし、なにより砦が守ってるからだろ」  こともなげに言い放ったトムの言葉を、「まさか」と皇甫が鼻で笑って一蹴する。 「本当にそう思っているのか。砦が緑を守っていると、お前は、本当にそう思っているのか」  食いしばった歯の間から発音しているようだった。トムは、あ然として返す言葉を失った。始めて見た感情らしい感情だった。 「違うの?」  と、尋ねたのは、もうたいぶ運転に慣れたアニーだ。 「砦の目的を考えればそうだろう」 「どういうこと?」 「たとえ、砦が緑を守っていたとしても、それは人のためだ」  トムとアニーは、わけがわからない、といったふうに顔を見合わせた。 「それに、砦があるということは、ここがそうなんだろう?」  と、皇甫は、CZ75を腰のホルスターから抜き、弾数を確認する。オリジナルハンドガンも同じように残数を確認し、補充する。  フロントガラスの中心に、切り倒されて積みあげられた大木が小さく見えた。人為的な行き止まり、通行止めだ。 「人の最果て――人とパンテラの境界線は」
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