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「出ていけって言ったって、朝にならないと出られないわよ」  アニーは、ハンバーグステーキとパンを頬張って、ワインで流し込みながら、ソファーで荷ほどきするコースケの手元を覗きこむ。手の中で、強化プラスチックと鉄塊を組み立てる。 「見ないガンだわ」 「オリジナルだ」 「オリジナル! リーガルで使っていた銃はCZ75だったわね」 「リーガル」  とコースケは、銃身をはめ合わせる手を止めた。 「トムの店よ」 「トム」 「コースケがCZ75で脚を打ち抜いた」 「ああ、タトゥーか」  サイレンサーを回しつけ、マガジンに弾を込めた。スライドを引く。それをテーブルに置いてバッグを肩にかけ、皇甫は立ち上がった。掛けてある外套に手を伸ばす。 「ねえ、朝にならないと出られないってば」  外套を羽織り、フードを目深にかぶる皇甫に、アニーは眉をひそめた。 「ジオに伝えておいてくれ」 「え?」  皇甫は、外から施錠されたドアに向かって銃を構えた。 「ちょっと! コースケ! なにするつもり!?」 「先に砦へ行っている、と」 「砦!?」  口で説明するよりやって見せたほうが早い、とばかりに、皇甫は、三度立て続けにドアに打ちこみ、さっと壁に張り付いた。  勢いよく開いたドアから伸びてきた、銃を構えた腕を掴んで捻りあげる。途中、銃が天井に向かって二回発砲し、見張りと思しきその男の手から銃が落ちた。床に落ちたガバメントをかかとで蹴りながら、 「アニー、伏せていたほうがいいぞ」 「言うのが遅い!」  咄嗟にソファーの後ろに隠れたアニーが吠える。 「早いと言ったり、遅いと言ったり注文が多いやつだな」 「アンタさっきの根にもって……」  アニーは、床のガバメントを拾い上げて、廊下に消えた皇甫を追いかける。 「早いし遅いし、先にいくし、コースケってホントド下手ね!」
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