86人が本棚に入れています
本棚に追加
「出ていけって言ったって、朝にならないと出られないわよ」
アニーは、ハンバーグステーキとパンを頬張って、ワインで流し込みながら、ソファーで荷ほどきするコースケの手元を覗きこむ。手の中で、強化プラスチックと鉄塊を組み立てる。
「見ないガンだわ」
「オリジナルだ」
「オリジナル! リーガルで使っていた銃はCZ75だったわね」
「リーガル」
とコースケは、銃身をはめ合わせる手を止めた。
「トムの店よ」
「トム」
「コースケがCZ75で脚を打ち抜いた」
「ああ、タトゥーか」
サイレンサーを回しつけ、マガジンに弾を込めた。スライドを引く。それをテーブルに置いてバッグを肩にかけ、皇甫は立ち上がった。掛けてある外套に手を伸ばす。
「ねえ、朝にならないと出られないってば」
外套を羽織り、フードを目深にかぶる皇甫に、アニーは眉をひそめた。
「ジオに伝えておいてくれ」
「え?」
皇甫は、外から施錠されたドアに向かって銃を構えた。
「ちょっと! コースケ! なにするつもり!?」
「先に砦へ行っている、と」
「砦!?」
口で説明するよりやって見せたほうが早い、とばかりに、皇甫は、三度立て続けにドアに打ちこみ、さっと壁に張り付いた。
勢いよく開いたドアから伸びてきた、銃を構えた腕を掴んで捻りあげる。途中、銃が天井に向かって二回発砲し、見張りと思しきその男の手から銃が落ちた。床に落ちたガバメントをかかとで蹴りながら、
「アニー、伏せていたほうがいいぞ」
「言うのが遅い!」
咄嗟にソファーの後ろに隠れたアニーが吠える。
「早いと言ったり、遅いと言ったり注文が多いやつだな」
「アンタさっきの根にもって……」
アニーは、床のガバメントを拾い上げて、廊下に消えた皇甫を追いかける。
「早いし遅いし、先にいくし、コースケってホントド下手ね!」
最初のコメントを投稿しよう!