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 見張りの男の発砲音を聞いて部屋から飛び出してきた男を、皇甫は次々と撃っていく。正直、ためらいはまだある。  この街に来る前に、何度かこのような銃撃戦は経験した。だが、崩壊前まで遡れば、実弾を使ったシュミレーション訓練は繰り返ししていても、実戦は縁がなかった。  同族嫌悪のたぐいなのかもしれない、と、階段を駆け下りながら自嘲する。ジオと同じではないか。  それが当然でなくなるまで、それは当然でなかったと気づくことすらできなかった。  これから生まれてくる子が丈夫であるように、五体満足で生まれてくるようにと、打ち立てた道筋は机上論にすぎなかった。虚栄でしかなかった。  数値化できない端数や、生死とは別次元の犠牲が、実現の過程に存在し、あるとわかっていたつもりで、わかってなどいなかった。  わかっていたら、こんなことにはなっていなかった。  皇甫は玄関を撃ち破り、闇の中に飛び出した。  乾いた夜風が外套の裾を巻き上げる。  スラム都市の夜は深い。  撒いたか。  薄汚れたビルの壁に背を預け、皇甫は耳を澄ます。足音と合図の声が聞こえなくなった。マガジンに弾を込め、スライドを引いて、ようやく一息ついた。  景観こそ変わったが、街のつくり自体は変わっていない。崩壊前に頭に叩き込んだ元首都の地図を引っ張り出して、月明かりを頼りに路地を進む。  夜通し光に溢れていただろう大都市は、今やゾンビが飛び出してきそうに薄気味悪いが、月明かりを反射して道路いっぱいにきらめくガラスの破片が幻想的でもある。  かつて、ポップコーン片手に楽しんだサバイバルアクションホラームービーとの違いをまたひとつ発見して、皇甫は歩く足を速めた。
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