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 横殴りの雨、と形容していいだろう。ぽっかりと空いた窓穴という窓穴から銃弾が絶え間なく打ちこまれ、カウンターの上にあるもの全てを躍らせている。 「どうなってやがんだよ!」  銃声に紛れてトムが怒鳴り、銃撃が途切れたほんのわずかな隙をついて、皇甫はカウンターの向こうに滑り込んだ。カウンターを盾にして背中を預け、頭を抱えているトムの隣に腰を下ろす。 「撒いたはずなんだが」 「ハア!?」  皇甫はオリジナルハンドガンをショルダーホルスターから抜く。 「だから、ここにくる前に完全に撒いた」 「完全に撒いたら来ねえだろうがよ!」 「なるほど。道理だ」 「納得してる場合か!」  再び、激しい銃撃が始まり、トムが首をすくめる。 「そもそも撒いたってなんだよ! どういうことだよ!」 「ジオに監禁された」 「されてねえじゃん! ここにいんじゃん!」 「ああ。出てきたからな」 「ジオから逃げてきたってことか!」 「逃げてない。ちゃんと玄関から出てきた」 「ということは、あれか。監禁されたってのに礼儀正しく玄関からおいとましましたってわけか。見張りのいる中を! 堂々と!」 「派手に」 「大問題だな!」 「ガンは」  カウンターの横から半身出して応戦し始める皇甫に、トムは深いため息をついて、カウンターの引き出しを漁る。 「……あるよ。コースケ、お前さ、ほんとなんなの」 「何か言ったか」  トムはやれやれと頭を振り、ハンドガンに弾を込め、スライドを引く。 「なんでもねえよ!」  銃撃が止んだのを見計らって、トムはカウンターに腕をすえ、トリガーを引いた。 「コースケ! コースケ!」  銃声の合間に女の呼ぶ声が聞こえた。 「コースケいるの!?」  ドア穴のすぐ近くからだ。 「アニー!?」とトムが声を上げる。 「トム!?」  聞こえるのは声だけだ。ドア穴は深い深い穴のように闇色に染まっている。 「なんでアニーお前がここに!」 「トム! コースケは!? コースケそこにいる!? 生きてる!?」 「いないといってくれ」と皇甫が面倒くさそうに呟く。「人違いだ」 「なわけあるか!」と皇甫に吠え、「アニー! コースケならここにいる! 中に入ってこい! 壁の内側に!」 「よかった! やってみる!」 「アニー! 今だ! 来い! コースケお前は舌打ちすんな!」
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