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 シャッターの重み以上の外力で車体が大きく揺れる。当然視界もぶれるが、くの字に折れたシャッターがフロントガラスに張り付いて前が見えない。 「二人はねたな」と、食べなれたB級グルメの感想を言うように皇甫が低く呟く。 「正面は建物だぞ!」トムが野太い悲鳴を上げた。「曲がれ曲がれ!」  アニーが粟食って大きくハンドル切る。タイヤがいななき、強い遠心力でドアトリムボードに肩が叩きつけられた。はずみでフロントガラスを覆っていたシャッターがずり落ち、嫌な高さに片側のタイヤが乗り上げ、ドスンと落ちた。 「しかもひいた。とんでもない念の入れようだな」 「うるさいわね! ちょっと黙ってなさい!」  尻を振って、黒い車体は道なりに加速する。激しい発砲音と同時に数弾バックドアに命中した。リズムを刻むような小気味よい音が車内に響く。そのうち二発がバックドアガラスを突き破りフロントガラスに抜けた。 「トム。家宝に悪いな。弁償する」ハンドガンを握った手をヘッドレスト脇に据え、立て続けに発砲した。バックドアガラスが崩れ落ちる。「ように心がけるから寝て待っていてくれ」 「しろ! 絶対にしろ! 即座にしろ! 言っとくけど、それ、うまくねえからな!」  トムも銃を握った手を伸ばし、すっかり見通しが良くなった後方へ撃ちまくる。 「トム! どっちに曲がるの!?」 「左だ左!」  キィイイイイイ、とタイヤを軋ませて、無人の交差点を左折すれば、闇夜に銃声が掻き消えた。  一変して静まり返った廃墟の大都市に走行音が響き渡る。車道が本来の役目を懐古するかのように、積もった細かなガラスがヘッドライトをの光を集めてきらめいていた。
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