3人が本棚に入れています
本棚に追加
「……リュウタ」
「リュウタ。良い名じゃない」
「あの、ここはいったい……?」
怪訝な表情で恐る恐る尋ねるリュウタに、ヒメは思わず噴き出した。
「え?」
「あ、いえ。ごめんなさい。……でも、そんなに警戒しなくでも良いのよ。ここはただのバー。悩める子羊たちの悩みを聞く、暖かい場所よ」
ニコッと優しい笑みを向けるヒメに、思いがけずリュウタは面食らう。
「……で、あなたの悩みはなにかしら?」
「…………」
閉口する彼にヒメは嘆息し、グラスを磨くバーテン服に視線を向ける。
「マスター。彼にも頼むわ」
「……わかりました」
マスターと呼ばれたバーテン服はそう言って丁寧にお辞儀すると、背後の棚からアイスぺールやシェイカーなどの器具を取りだし、目にも止まらぬ早さでカクテルを作り始めた。
最初のコメントを投稿しよう!