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目の前には40メートルほどの岩山がそそり立っていた
(何処なんだここ?)
ざわめきか聞こえたので、岩から目を離し辺りを見渡す
皆がみな突然のできごとだったらしく、背広に制服、クーラーボックス抱えた釣り人、はてはパジャマと、まるで統一制がない
(知らない人達だな、状況は誰も解らんか、
VRにしては髪や服のシワがリアルすぎるし
周りは岩だらけで視界も悪い……上がってみるか)
思い立ち初めに見上げていた岩山を登り始める
(ロッククライミングなんていつ以来だ?ガキの頃近所の崖を登って親を怒らしたっけ、あの崖昔は凄く高く感じたんだが、実際10メートルなかったな)
「おい!何やってる!」
15メートルほどあかった所で下から怒声が上がる、下を向くと頭の薄い丸い感じの中高年がコチラを指差し喚いており、
その声につられ、いままで気付いていなかった人々の視線も自然と此方を向いてくる
(うふぇぇ下見るんじゃなかったな……… 高っけ~)
2メートル上がった所が岩棚になっていたので其処に体を預け 再度、下を見おろしてみる
「あのオヤジ、まだ喚いてるな 不安消したいのは解らんでもないが 俺を巻き込むなよ」
今年35になる自身のことを棚あげして 呟き、また自分も不安から岩山を登っているのに気が付いていない
「すいませ~ん!周りが気になって上がってるです!」
彼の声に前の方にいたメガネをかけた二十歳ほど女性が返してくる
「そこから!なにが!みえ!ますか!」
「何も!岩と荒野が地平までつづいてるだけです!」
「ふざけるな!そんなはずがあるか!?ここは日本たぞ!」
(ウッセ会話に割り込むなよ禿げが)
「反対側も気になるで上まで 登ります! 後でケータイで動画撮りますんで!」
そして彼はまた岩を登り、下にいる者の大半はもう気付いているのだった
ここは日本じゃない
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