薬売り

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「なぁ、お前いい加減に…」 シビレを切らした土方が女に言いかけるが、女は 「んで、こっちが軟膏で…」 と、土方の言葉を受け流し、更に薬の宣伝を始めるのだ。 その瞬間、土方の中で何かが切れた。 「てんめぇ! こっちが黙ってたら、いい気になりやがって!! うちは石田散薬があるからいいと言ってるだろうが!」 「と、歳! いくらなんでも女の子にそんな言葉は…」 キレた土方をなだめる近藤。 しかし、当の女は全く動じず 「だから、あれはとんでもないエセ薬なんだってば」 またもや言い切ったので土方は 「うちの薬のどこがエセ薬なんだ!? 言ってみろ!」 怒鳴り付け、女は仕方なさげに答える。 「あの石原?石田?…散薬は、薬草を黒焼きにしてるでしょ? その時点で、もう薬草の効能はなくなって…」 「帰れぇっ!!」 「ひぎゃぁー!!」 女の言葉に完全にキレた土方は、女の襟首を掴むと、そのまま庭に投げ捨てた。 ドシャっ…と鈍い音をさせて庭に落ちた女はめげずに 「何よ! こっちは真実を言っただけだっての!! そんな薬、何の役にも立たないのよ。 この鬼! ドケチ!! 守銭奴!」 そうわめき散らしたため、更に土方の怒りを買う事になった。 「忘れ物だぞコラッ!!」 「ぐはっ」 土方は怒鳴る女の顔面めがけて、女が背負っていたカゴを投げ付けた。 それは見事に命中し、女は仰向けに地面に倒れたのだった。
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