薬売り

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「と…歳…」 土方の横で近藤が何か言ったが、土方は 「それより、俺たちには重大な話があるんだ。 あんな馬鹿女に構ってられねぇよ」 そう言って部屋へと戻ったので、近藤も仕方なく土方に続いていった。 「ちきしょー…あの野郎一発くれやがって」 土方のお陰で、軽く脳震盪(ノウシントウ)を起こしかけた女は、顔面を押さえながら体を起こす。 顔面は真っ赤になっており、更に鼻血まで出ていて、とても見れたものではないが女は気にしない。 「こぉんのクソ野郎が!」 と、最後のあがきに土方たちの入っていった部屋の障子に怒鳴り付け、女はカゴを手にしようとした。 その時、 「あれ? こんな所に女の子がいる」 そう言いながら、女に一人、細身の若い隊士が近寄ってきた。 「ん? あんた誰?」 女が疑問を口にすると、その細身の隊士は 「え? 私は沖田総司って者ですよ。 一応、これでもここの隊士なんですが…」 と、はにかんだ。 それを見て、女は先程の愚痴を呟く。 「全く。壬生浪士組の連中は喧嘩っぱやいって聞いてたけど。 まさか殴られるとは思わなかったわよ」 「殴られた? 誰に?」 「あのクソ土方って奴よ。なんか、態度も偉そうで本当に腹立つ!」 「ありゃ、土方さんでしたか」 その名前を聞くと、沖田は申し訳なさそうに頭を掻く。
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