始まりはストーカーだった

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日記帳を胸に力強く抱きしめる。まるで崩れ散ってしまったかのような自分の心。何かが体を貫くよう。それに、全力疾走を100本したあとのように息が苦しい。唇を強く噛みすぎて切れたみたいだけど、そんな事はどうでもいい。 顔が沸騰したかのように熱くなる。目の前が見たくない現実を、絵の具でグチャグチャにぼかすようにぼやけて見える。 涙のせいだと気づいた。 私は泣いていた。理解するよりも早く体が反応していたみたいだ。 理由はわかっていた。見ているのだから当然だ。一瞬たりとも見逃さないように、まばたきすら許さない。 グルグル体を巡るような黒い感情が、ピンク色の自分を塗り替えていく。侵食していくウィルスかなにかのようで。 病気にかかったように、体が震えだしていた。 心に決めた、大好きな一弥(かずや)先輩が、見知らぬ髪が長いスーツ姿の女と。 熱いキスをしていた。
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