Short-Short

＊煩悩の数よりも強く君を

　キリーを好きになった日からずっと、俺は左手に数珠のブレスレットを（仏教徒じゃないけれど）つけ続けている。

　理由は至極簡単。

　その日が鎌倉への校外学習の日だったから。たまたま同じ班になった俺とキリー。

『佐倉くん、だいぶつ好き？』

『うん割とね。見てたら落ち着かない？』

　そう言って大仏をじっと見つめるキリーの横顔が、大仏とか、なんたら菩薩とかよりよっぽど綺麗で、神々しくて、やっぱり綺麗だった。

　その瞬間、俺は恋に落ちたんだ。