絶対、帰らないったら!

2/8
前へ
/55ページ
次へ
「あ、あああああなた誰っ!? 名を名乗りなさい!!」  すかさず木の幹の裏の裏―――つまりは最初にいた側に回りこんで、私の肩を後ろから叩いた誰かと距離を取った。  辺りが暗いだけに、迂闊に走って逃げることもできないし、それに、私のボストンバッグを奪ったのはこの声の主かもしれないんだ……! 「……ぷっ……ははっ……!! さっきから思ってたけど、キミ、ちょっと百面相すぎるよ!!」   と、思ったのに、声の主はとても可笑しそうにげらげらと笑い始めてしまって、私は思わずぽかんとしてしまう。  あ、呆気にとられるってこういう感じかな。  っていうか、百面相って……。 「ま、まさかずっと見ていたの……!?」  何となくその笑いや言葉に悪意を感じなくて、私はもう、逃げる必要はないと判断する。  だけどとりあえず何かを守らなくちゃいけない気がして、木の幹にしがみついた。  まだ、その姿は見えていない。 .
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加