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「あ、あああああなた誰っ!? 名を名乗りなさい!!」
すかさず木の幹の裏の裏―――つまりは最初にいた側に回りこんで、私の肩を後ろから叩いた誰かと距離を取った。
辺りが暗いだけに、迂闊に走って逃げることもできないし、それに、私のボストンバッグを奪ったのはこの声の主かもしれないんだ……!
「……ぷっ……ははっ……!! さっきから思ってたけど、キミ、ちょっと百面相すぎるよ!!」
と、思ったのに、声の主はとても可笑しそうにげらげらと笑い始めてしまって、私は思わずぽかんとしてしまう。
あ、呆気にとられるってこういう感じかな。
っていうか、百面相って……。
「ま、まさかずっと見ていたの……!?」
何となくその笑いや言葉に悪意を感じなくて、私はもう、逃げる必要はないと判断する。
だけどとりあえず何かを守らなくちゃいけない気がして、木の幹にしがみついた。
まだ、その姿は見えていない。
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