絶対、帰らないったら!

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「正面に座っても?」 「ど、どうぞ……」 「では、失礼して」  ほら、しかもやっぱり言葉尻が大人っぽいわ。  ランタンをちょうど中間辺りに置いて、私と対するように、彼もまた座り込む。 「勝手に荷物を漁って、悪かったね。おつかいの途中で眠ってしまったのか、それとも別の理由があるのか……それによって対処を決めなくちゃと思ったもんだから」  そ、そうだった!! 下着入ってたのに!!!!  男性に下着を見られてしまったかもしれない、なんて、物凄く恥ずかしいとか、そんなレベルの話じゃなくて、私は思わず泣きそうになってしまった。  けど、悪気があったわけじゃないし、自分がこんなところで眠りこけてしまったのが悪いんだもの、怒れない。 「いえ、私の方こそ、ご心配をおかけして……お目汚し、失礼いたしました」  とりあえず、今更無駄かとは思うけど、“ルーゲルダ家のお嬢さん”の体裁を貼り付けてみる。 「何も盗ってないから、きちんと確認して。それが確認できたら、すぐに家に帰るんだ」 「……ええ、わかりました。ありがとうございます」  にこり、と笑って。  この場をやり過ごすことだけを、考えていた。 .
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