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―――とりあえず彼と別れてから、森を抜けなくてはならない。
私の返答を聞いた彼は、ふう、と一つ溜息を吐く。
そして、ずい、と私の方に少し身を乗り出してきたので、思わずその分身を引いてしまった。
「こら、真面目に言ってるんだよ。この森にはウルフやウッドゴブリンなんかも出るし、女の子が夜に一人で、しかも丸腰で抜けるのは無理だ。推察するに家出だろうけど、早く帰って、ご両親に心配をかけたことを謝っ……」
「いや、絶対帰らない……!!!!」
彼の言葉を聞き終わる前に、私はそう宣言して、勢いよく立ち上がる。
「何も知らないのに、大きなお世話よ……っ!! 私にだって意地ってものがあるんだからっ。絶対、絶対帰らないったら―――!!」
はぁ、はぁ……。
さほど大きな声を出したつもりもないのに、息が上がる。
ぽかん、と口を半開きにしている彼の目が、まんまるになっていた。
ついまた足元に置き去りにしてしまったボストンバッグを慌てて拾い上げると、私は彼にペコンとおじぎをして、何も言わずに歩き出した。
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