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既に日は暮れて、木が生い茂る森の中では、空からの微かな光は届かない。
彼の持つランタンだけが、私の歩く道標になっていた。
よくよく考えてみたら、ついさっき出会った人に着いて行くのって、危ない……よね。
「あ、あの……っ」
少しだけ先を歩く彼の背中に声をかけると、彼は「んー?」と間延びした声で返事をする。
「ご神木に行くには、この道でいいんですか?」
「うん、間違えてないよ。ほら」
こちらを振り向くことなく、彼はショルダーバッグから羊皮紙の巻物を取り出し、後ろ手に私に差し出す。
受け取りそっと広げると、描かれているのは地図だった。
多分、ドレンの雑貨屋で売っているものだと思う。随分詳しく、隣町への道程が記されている。
これを受け取ってみたところで、現在地がどこなのかわからない私には、道があっているのかどうなのかもわからない。
っていうか、何年か来ていないうちに、こんなに道が出来ていたなんて知らなかったなぁ。
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