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というわけで、中途半端な中流名家ではありきたりな理由で、私は家出を決意した。
今日はバカ親父も浮かれたお母さんも、ベンデッタ家に挨拶に行くと言って留守にしている。
そのおかげ庭師も今日はサボりたい放題で、今頃のんびり昼寝でもしているだろう。
結婚したばかりの兄さんは、義姉さんと隣国へ船旅中だし、そしてこれまた幸いなことに、2人のメイドも今日は買い出し。
これを逃したら、次はいつになるかわからない。
はじめは、部屋から見える大きな木の太い枝から、どうにか下りることを考えていたんだけどね。
これだけの好条件が重なるんだもの、正攻法で行くのが吉!というわけで、こそこそと階段を下りている真っ最中なわけだ。
着替えの詰まった小さなボストンバッグと、肩からかけたポシェットが、今の私の全財産。
難なく玄関ホールまで辿り着いて、物音をたてないよう細心の注意を払いながら、外へと続く扉をそっと開ける。
多少の鈍い音は響いてしまうけれど、これくらいで気づかれることはない。
同様に扉を閉め、前庭に庭師がいないことを再度確認すると、私はそこを一気に駆け抜けた。
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