第一章 優しい人達

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「楽しみだね」 「? ああ、親睦会」 「そうだよ、だって知らない場所に行けるんだよそれだけでわくわくするよ」 「そんなものか?」  趣味って程じゃないけど春は僕と違って外出が大好きだ。デジカメを持ち歩いて撮った写真をよく見せてくれる。 「デジカメ持っていくのか」 「もちろんよ」  僕は窓側つまり奥、春は扉からちかい手前側に寝ているのだがいくら最奥に逃げても春の髪の毛が顔に触れて鬱陶しい。会話が途切れるとエアコンの駆動音が良く耳に入る。いくら初夏とはいえ、エアコン点けた手前、この部屋を出れば地獄をみるだろう。本来ならまだお呼びじゃなかったが、春の乱入により今年は早めに目覚めてもらうことにした。 「もう少し向こうに行ってくれないか」 「……」 「無視すんなよ」 「……」 「?」  近づいて顔を覗きこめば気持ちよさそうに寝息を立てていた。 「こいつ」  無力な僕はベットの隅で体を丸めて眠りに落ちた。  翌朝、呆れる事に僕は窒息しそうになって目覚めた。窓からの光も目に届かず顔を覆われている。両手で押し出せばやけに柔らかい、もしや……。 「む~……おはよう、……………………どこ触ってるの」 「いやこれは」  むしろお前が覆いかぶさってきたからこのような事態に陥ったんだろ。 「もー、えっち何だからぁ」 「違うよ」 「言ってくれればいくらでも触らせてあげるのに~」 「だから違うって!」 「……冗談だよ?」  目覚めが最悪だ。この日春は朝食を食べていかず自宅に帰宅した。  ――翌日。  放課後寛いでると携帯がけたたましく鳴った。確かめずに出てみれば、 「涼今度の親睦会のために買い物行こうよ」  幼馴染みの春だった。  電話の後すぐに身支度をすませ駅近くのデパートの入口に着いた。すでに待ち人は居てこちらに気付くと微笑んで手を上げる。 「電話したばかりなのに早かったのね」 「春こそ先に到着していたじゃん」 「私はここから電話したから」 「さっ、入りましょう」 「何から買うつもり?」 「まずはパジャマが欲しいの」 「ジャージでいいじゃん」 「男の子はそうなのかもしれないけれど、女子は寝間着にも気を付けるの」 「女子は理解できない」  そんなんじゃいつまで経っても彼女できないわよと春に手を引かれ、エスカレーターを使って寝間着コーナーへ。 「小学校の臨海学校の時もここへ来たけどこの店センスいいか?」
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