第一章 優しい人達

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「う~ん……私好みじゃないかもね」 「じゃあどうして」 「だってさっ、ここへよく5人で買い物したから何か必要な時、買うのはこの場所って決めてるんだ」 「…………5人でねぇ」  今の僕の表情は久々に最悪だと思う。きっと見開いて歯噛みしているだろう。 「りょ、涼。決まったからレジ行こう」 「……ああ」  どうやら久々に奴らを思い出して苛立ち感情を表に出してしまった。最近は少し耳にしたくらいだとどうってことないのに。  次はシューズコーナーに辿り着いた。当日、山のふもとまではバスで行けるが私有地にある建物までは徒歩で行かなければならない。よって、当たり前だけど軽い登山。その為歩きやすい靴を買おうと先日泊まりに来た時に春と話し合っていた。 「どれにしようか迷うな~、涼はもう決めてるの」  頷く。僕はスポーツブランドでは有名な会社の一つの靴を買おうとしている。理由は普段の生活もこの会社の製品を履いていて、今回はどうせだから違うカラーの同じ品に決めていた。春が未だに迷ってるなか、手持ち無沙汰なため他の商品も見て回った。すると、見知った人物に出会う。 「あ……あれ、久崎くん? そうだよね、間違ってなくて良かったー」  同じ班員の松山 りなさんだ。 「一人?」  後ろを指さす。納得したようだ。 「あ~、春と一緒か。もしかしてデート?」 「違いますよ、ここに居る目的は松山さんと同じだと思います」 「そっか」 「りな?! わ~いりなだー」 「気付かれたみたいね」  松山さんは困ったように片手を額に添えた。その実、顔は嬉しそうだ。 「何? りなもお買いもの」 「そうよ、靴壊れちゃったから」 「なら、りなもこの店終わったら一緒に回ろうよ」 「でもねぇ……」  りなさんは僕に視線を移した後春に戻した。 「やっぱりあたしは遠慮させ――」 「僕は全然構わないんで気にしないで下さい」 「ほら、涼もこう言ってくれてるし私まだ靴選び終わってないからアドバイスちょうだい」 「わかったわよ」  そう言ってよ二人は楽しそうにコーナーの奥に消えていった。 「ふ~、少し休もう」 「そうね」  三人は三階フードコーナーの一角に座って一息ついた。あの後、りなさんは20分程度が決まったのに春は1時間半掛かった。選ぶ方も疲れたようだけど待つ方も同様に疲れた。
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