第二章 親睦会

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 それから少し時間が経つって、松山さんと席を換わった。一人離れて話ずらそうにしていたから僕が譲ったのだ。松山さんの席に腰を落ち着かせても手持ち無沙汰だ。あちらの席に居ても女子の話題についていけないから避難してきたのだが、こちらはこちらで出発してからずっと気持ちよさそうに眠っている四方田君が居るだけ。座席でよくそこまで気持ちよさそうに眠れるなと思った。目覚めた時には身体中が痛みだすだろうけど。今さらだけど文庫の一つでも持ち歩けばよかったと悔やむ。こういう時間が一番勿体無いし僕は嫌いだ。今度出掛ける時は必ず常備しよう。 「……ふぅ」  改めて思う、バスの窓側は危険だとテレビなどでも放送されている。でも、通路側の席はたとえ危険じゃなくとも景色も拝めないのだからつまらない。観ようとすれば可能だ。しかし、どうだ? それは他の生徒たちにどう目に映るだろうか。 「久崎くん」  呼ばれた方、つまり右隣を向けば手にトランプを持った松山さんがこちらに視線を送っていた。 「トランプ?」 「そうよ、三人でやろうって話してたんだけれど、どうせなら久崎くんもどうかって」 「いいの? 女子しかいない中で一人だけ男子だと邪魔じゃないかな」 「そんなことないよ、考え過ぎだよ。ほら、やりましょう」 「う、うん」 「咲がババ抜きしか知らないらしいんだけど、それでもいいかしら?」 「構わないよ」  早速松山さんがカードを念入りに切り始める。ショットガンシャッフルまでしている。手早くカードを配り終えて、各々手札を適当な枚数に揃えてゲーム開始。 「誰からしよっか」 「咲が一番~」  誰も反論しないからそれで決定。左隣の春のカードを引く。 「ちぇ~」 「咲は正直すぎ」 「そんなことない」  どうやら咲さんがババを引いたようだ。 「次は私ね」 「はい、どれでも好きなカードをどうぞ」 「じゃあ、これ。やったダイヤの二手札にもあるー」  春の手札は残り四枚。 「あたしの番ね、久崎くんいいかしら」 「ああ、はい」  取り易いように右側へ。枚数が揃わなかったのか僕の手札が一番多く八枚。 「では……これを」  中央のカードを引き抜かれた。それはスペードの一。松山さんを見るにどうやら一があったようだ。やっとこさ、僕の番。
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