第一章 優しい人達

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 僕は朝食を早々に済ませると家を足早に出た。学校までの足取りは重かった。教室に着いたって話す友達が居ない、退屈なだけだ。教師たちは生徒達に常に集団行動と口が酸っぱくなるほど言ってるけど、僕みたいに集団からあぶれる奴だって居るんだ。本当学校なんて退屈だし辛いだけだよ。ここに毎日登校しているのは幼馴染みの春と一緒に登校していなければとっくに不登校になっていた。僕が特に今日学校に行きたくないのには理由がある。毎年、教師陣が生徒同士をより一層中を深めるための親睦会がある。友達が当たり前のようにいるような奴らには楽しいかもしれないけど、僕みたいな友達がいない人にとって地獄以外の何物でもない。 「ほらほら暗いぞ、元気だしなよ涼」 「これが僕の素だから仕方ないだろ」 「そんな訳ない私と休日二人で出掛ける時は楽しそうな顔してるよ」 「してないよ」 「してたよ」  絶対本人には言わないけど、春と一緒に居るだけで春の心地よい陽気を浴びてるみたいだ。今まで自殺を何回も考えたことあるけど休日も約束なしで家に遊びに来るから春の光に当てられてもう少し生きようと毎回思う。 「これでもまだマシな方」 「そうかもだけどー、たまにはハイテンションでいこう」 「いきなりテンション高くなったら変だよ、周囲に精神的に狂ったか薬でも使ってると疑われるよきっと」 「た、確かに涼がいきなり元気になったら変かも」 「そうだろ? 少し急ぐよチャイム鳴ってる」 「いけない、行くよ」 「お、おい」  春は僕の右手を掴んで走りだした。正直走りづらいし周りからの視線が痛い。結局、教室まで手を繋いだまま走り続けた。  教室の連中は眼差しだけをこちらに向け言いたい放題。 「おい見ろよ今日もだ」「本当だうらやま……じゃない調子にのってるな」「久崎の分際で春さんと手を繋ぐなど、春さんが穢れてしまう幼馴染みだからといって許せん」「誰かあいつを放課後映像研究部の部室に呼べ」「俺は嫌だぞお前が呼べ」  若干耳に入るが物凄い物騒だ。聞こえなかった事にしよう。隣の春は気付く様子もないし。 「じゃあまた放課後ね」 「はいはい」  春は僕と同じ列の一番前の席に座った。僕も椅子に腰を下ろして鞄を掛けると手持ち無沙汰なので窓から空を眺めた。今日は割と天気もよく快晴とまではいかないが教室の中はクーラーも無い為物凄く熱い。
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