第二章 親睦会

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「涼、行くよ」 「わかってる」 「あ、みんな待ってよ~」 「久崎、お前男の癖に体の線が細くて途中で倒れられても大変だから、荷物少し持ってやろうか?」 「え? ……いや、大丈夫だよ。それより咲さんが辛そうだよ、僕は空手やってるからそれなりに体力には自信があるから平気」 「そういばそうだったな、すまんすまん」  咲さんはちらっと見て慌てて視線を外す。 「意外だな~」 「意外って?」 「こういう時一番に頼ってくると思ったから」 「……咲、人の手を借りるほど弱くないよ!」 「どうしたんだ? 普段のあいつらしくもない」  咲は六班から外れるように足早に先を急ぐ。それを後から春が追いかける。 「……咲は、昔からそうなのよ人に頼るのを酷く嫌う」  四方田くんは目で続きを話すように促したような気がしたけど、松山さんは詳しく話そうとはせず黙って歩を進める。二人が先行してしまったから今は三人。黙々と急勾配な坂を登る。多少整備されているようだが、街中と違ってやはり慣れないから歩きずらい。それから僕ら三人は第一チェックポイントに三十分で到着。もちろん二人は先に着いて待っているものばかりだと思っていた三人。しかし、いざ到着し辺りを見回しても確認できない。第一チェックポイント担当の先生に訊いても見かけてないという。最後に、全員揃わなければ先には進ませないと忠告を受けた。 「弱ったな」  最初に口を開いたのは四方田くん、その言葉に他の二人も頷く。仕方なく踵を返し来た道を戻ることにした。どこかで迷子になってるかもしれないし怪我をして動けないのかもしれないと思うと急に不安になる。 「居ないな」 「久崎そんなに焦るなって、三人で捜せばすぐに見付かる」 「そうよ、四方田の言う通り。焦ってたらあたし達まで道に迷うかもしれないわ」 「……そうだね」  途中山道から下りる僕らを目にする生徒達は実に不思議そうだった。その眼差しは何故苦労して登ったばかりなのに下りるんだと告げていた。結局スタート地点まで戻ってみた。山裾の駐車場まで乗車してきたバスや人一人いない。 「さすがにもう待ちくたびれてるんじゃない? チェックポイントで」  その一言でもう一度チェックポイントを目指す。待っていると祈って。もし居なかったら流石に不味いから先生たちにも協力してもらおう、あの二人酷く怒られるだろうな。
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