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途中、先程登った時には気付かなかった、もう一つ歩けそうな山道を発見した。もしこの道をあの二人が入ってしまったらもちろん目的地には着かないだろう。それどころか、僕もこの先がどこに繋がってるのかもわからない。事前に配られたこの山の簡易マップにも記述されていない。三人で悩んだ末少し行ってみることになった。五分……十分……十五分……三十分……二時間半。歩いてるうちに太陽は姿を消し始め来た道も解らない。松山さんのどこかで聞いたらしい曖昧な知識に頼り、山で遭難した時はなるべくその場を動かないを実行した。今回のしんぼくかいで全くと言っていいほど必要の無い携帯用ランタンをリュックから取り出した彼はそれを灯す。数秒のもしないうちにたくさんの虫たちが集まってきた。松山さんが悲鳴を上げ出す始末だから結局消す。
「今日はここで寝るの嫌だな」
「虫か?」
「一番の理由はそう……ね」
「まだ何かあるのか?」
僕も疑問に思う。
「だって男二人とこんな近くで寝るのよ」
確かに一メートルも離れていない。
「平気だよ俺ら何もしねーよ、なっ久崎」
「はい、疲れてるし何もする気力もないかと」
「ああそれと」
四方田くんはまたリュックをガサガサし始める。また何か便利アイテムが出てくるのか?
「はいこれ、一つしかないから松山使ってくれ」
「いいの?」
松山さんに手渡されたのは寝袋初夏でも山は冷えるから。
「当り前だろ女子に無茶はなるべくさせたくないのが男ってものだろ、そうだよな久崎」
「はい」
「ありがとう四方田」
各々土の上に横たわり汚れるのも厭わずに目をつむる。三人とも髪の毛が汚れるのを嫌ってリュックを枕にしてみた。案の定、寝心地は悪い。辺りは静寂に包まれていて酷く不気味に感じた、他の二人も感じるようすだったがあえて口にしていない様子だった。
「寒いな……」
その静寂を呟くように破ったのは彼、四方田くん。
「まだ起きてたんだ」
「……」
「松山は寝たみたいだな」
「そうですね。せめて僕たちもタオルを体に巻くぐらいした方がよさそう」
「そうだな」
こうして体にタオルを巻き終えた二人。……正直。
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