第二章 親睦会

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「かわらんな」 「無いよりはいいでしょ」  彼も頷く。 「今頃先生たち大騒ぎかな?」 「そうだなー、警察にだって連絡してるかもしれん」  その言葉を聞いて事態の深刻さをようやく理解し始めた。でも、今さすがにネガティブな思考をして四方田君と松山さんに迷惑かけるわけにいかないし。 「それより二人はどうしたのかな?」 「実はこっそりチェックポイント抜けたんじゃねぇの? 他の班に混じって」 「うっ……春ならノリノリでやりそう」  さすがに彼も苦笑している。 「俺さ、久崎人が嫌いだと思ってたよ」 「……え、どうして」 「だってクラスに居る時は文庫本読んでるだけだし、それに水辺乃としか会話してるの見た事ないしさ」 「本……好きなんだ。春とは小学校が一緒でクラスも同じに回数が多くて」 「それって幼馴染みってやつか」 「ま、まあそう……なるね」 「うあー、いいなー羨ましいじゃねぇか」 「実際はそんないいものじゃないよ」  苦笑交じりに答えると、彼には贅沢だ咎められた。 「俺にも幼馴染みがいればその人を絶対彼女にしてみせる」  四方田くんは思春期男子らしく彼女を欲している。それに比べ僕といえば、あまり興味がない。前に春に訊かれたとき男が好きなの? と言われた。そんなわけがない、今はまだ誰かを好きになるのとかには興味がないという話だ。 「久崎好きな人いねーの? ほら、水辺乃とか」 「いやーないですね」  即答するれば、一拍置いてから言った。 「なら、俺狙ってみようかな」 「どうぞどうぞ」 「あなた達早起きね」  早朝、目を覚ました松山さんの開口一番がそれだ。結局僕ら二人は夜通し眠いのも堪え喋り続けた。結果、休日電話で誘い遊べるくらいの仲は深まった。 「おかげで眠いよ」 「だなー」 「四方田も久崎もバカね」  匠は反論をしようとしたが眠気に負けたのか口を開きかけただけ。 「あたし昨夜も食べてないからお腹空いたよ」 「それりゃあここに居る三人が思ってることだろ、だけど昨日涼と話してて思い出したんだよ」 「何を?」 「リュックにカロリーメイトのチーズ味とチョコ味が入ってる事に!」 「……それ、どうして昨日言ってくれなかったの」  松山さんの視線は冷たい。それに対し彼は、目を泳がせている。
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