第二章 親睦会

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「二人ともあれ……」  松山さんの指さす方に視線を向ければ途切れた道を発見。 「もしかして戻れたのか」 「そうかもしれないよ」  三人は足早に見付けた山道を進む。少し開けた山道の先には改装されたばかりのような真新しい建物の前に出た。庭先では生徒らが集められ朝会らしいものが行われている。真っ先に気が付いたのが担任。 「おい、お前ら今日は帰る日じゃないぞまだねぼけてるのか。早く部屋に戻ってリュックおろしてこい」 「「「はい」」」  不思議な事に騒ぎにすらなっていない。他の二人も怪訝な顔をしている。 「いったいどうなってる」 「あたしにも分からないは、この状況には驚いてる」 「まさか僕ら忘れられてたとか?」  沈黙。 「その可能性はあまり考えたくないな」  話しながら建物入り口まで足を運ぶ。部屋の場所を知らない事をふと思い出した。 「とりあえず玄関先に置かせてもらいましょうか」 「そうだね」 「じゃあ交ぜてもらいますか、朝会に」 「あたし達の班はどこかしら」 「多分右後方だと思うよ、その場所に二人も並んでるはず」  二人とはもちろん春と咲さん。入口から五メートルもしないところに二人は佇んでいる。春は僕達に気付いたのか申し訳なさそうな表情をしてる。到着すると先日学校で並んだ位置に立つ。一人咲さんを除いては。 「三人ともどこにいたの?」 「どこって……」 「無事ならいいけど、昨日大変だったんだから。点呼の時三人が居るようにごまかすの……クラスのみんなにも手伝ってもらったから感謝してよね」  匠と松山さんと僕で見詰めあう。きっと三人とも、だから騒ぎになっていないのかと納得。眼前で手持ち無沙汰に佇む咲が彼に話しかける。 「君達抜け出して何してたのよ~」  匠は顔を歪めた。顔だけみると今にも殴りかかりそうな迫力。それだけ心配していたのだろう。 「お前を……」 「咲がどうしたって~」 「いや……なんでもない」  身体ごと振り向いていた彼は再び前を向き、教師の話に耳を傾けていた。咲さんは、咲のせいにしないでよと呟いてたけど、彼が真剣に探してたことを知ったらどう思うだろうか。  朝会は途中参加したこともあって、五分程度で終了。今回様々な体験教室が開かれ生徒達は自由にどれでも体験していいことになっている。生徒らはぞくぞくと会場に向かって行動を始めていた。
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