第二章 親睦会

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「涼、お前どこ行くー?」 「とりあえずまきわりに」 「じゃあ俺もそこに決めた、早く行ってみようぜ」  そこで先程から視線を感じた。 「何だよその目は」 「別に妙に仲良くなってるからさ」  気付けば咲さんからも見据えられていた。その視線に知ってか知らずか。 「俺達友達になったのさ、そうだよな涼」  頷く。春と咲さんは多少驚いていたようだ。 「急ごうか匠、もう始まっているかもしれない」 「そうだな」  僕達が歩きだすと班員もぞろぞろ後もつけてきた。どうやら三人も決まらないからとりあえず追随してるようだ。結局、五人で目的地に向かう事になった。まきわり体験は建物の裏で行われているそうだ。先生の説明によればその場所に大量の薪と大振りの斧と小振りの斧が置かれていると言っていた。裏手に回ると人気が無いのか担当講師が寂しそうに丸太に腰掛けている。 「おじいちゃんがここの講師?」  春が不思議そうに尋ねるが相手からは穏やかに応じられた。 「そうじゃよ、おぬしたちは」 「見て分かるとおり体験しに来ました」 「そうかそうか」  初老の男性はそれはそれは嬉しかったのか眦が八の如く垂れていく。僕も尋ねると。 「他の人は?」  一転しょんぼりして風で。 「おぬしらだけじゃよ」 「そうですか」  気まずい雰囲気になってしまった。それを払拭するように。 「じゃあ始めるかのう、まず手近な丸太を選んで」  各々が近場の丸太の前に佇む。丸太にはどれも小振りの斧が浅く刺してある。 「おぬしらから右側に薪がまとめておいてあるじゃろ、その中から五本好きなものを持ってきなさい」  皆言われるまま取りに行く。大量に薪が置かれている場所には雨で濡れないようにか屋根だけが備え付けらてその辺りだけ日陰になっていた。薪は不揃いなものばかりだと思っていた。しかし、予想とは違い均等。そのお陰で特に迷う事も無く皆選べた。 「いたっ」 「咲さんどうした」  立ち止まってる彼女に少し先を歩いていた僕は薪をその場に置いて近寄る。 「指に表面の木が刺さったみたい」 「すまんすまん言い忘れておった、軍手を嵌めないと手に刺さるぞ……もう遅かったか」  おいおい。講師はいつの間にか背後に居て軍手を携えて苦笑している。 「まあ、ここにも一応救護室がある。誰も居ないがね、その子を連れてってあげなさい」 「はい、行こう咲さん」 「そうだね~、さっさと済ませてこよう」
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