第二章 親睦会

12/13
前へ
/78ページ
次へ
「他の者たちはこれから薪割りのコツを伝授するから丸太に薪を一つ……」  建物内に入って探している最中にピンとくる。迂闊にも講師に場所を訊くのを忘れていた。 「どうしようか? 一度戻る」 「もう少し探してみよ~、確か昨日この建物に着いた時に担任が説明してくれたんだよ」 「一階?」 「そう。恐らくこのあたりのはず」 「じゃあ歩こうか」  咲さんともう少し進んでみることになった。建物入り口から一番目に左通路から回った。八枚の扉がありそれを一枚ずつ開けて確認してみたけど、それらしい部屋は見当たらない。というわけで、今は右通路を歩んでいる。こちらも先と変わらず八枚の扉があり現在三枚目を確認中。 「……ここみたいだ」 「でも、誰も居ない~」 「大丈夫、木のトゲの処置ならできる」 「それは頼もしい~」 「座って」  扉付近の丸椅子に腰掛けてもらい、毛抜きとマキロンを用意完了。 「トゲ刺さったところ診せて」 「両方の手に刺さってるみたい」 「本当だ、でもこれなら数はあまり多くないから大変じゃない」 「お願いー」  まず差し出された右手から処置を開始。指先だけに集中している。浅く刺さっているおかげで抜きやすく慎重に親指から取り除いた後、格指にマキロンを振り掛ける。左手も同様に処置を終了した。途中、失敗して毛抜きで指を挟んでしまったりもして脹れっ面をされたが処置をしてあげたこともあってか許してくれた。毛抜きやマキロンを元の位置に戻して帰ろうと立ち上がっても咲さんは座ったまま動かない。怪訝にしていると顔を上げた質問された。 「一つ訊きたいことがあるんだけどいいかな?」 「? いいよなんでも」 「今朝の匠の反応がずっと気になってて、普段だったらあそこ愛想笑いしながら返してくるのに」 「あー……あれはね、ちょっと理由があるんだよ」 「教えて! お願い」  彼女は眼前で手を合わせてお願いしてくる。 「教えてもいいけど、匠に言わないってことを条件にね」 「ありがとう」  そこで僕は昨日の出来事を反芻した。解り易く説明しやすようにしたかったから。 「実は昨日僕達が帰ってこなかったのは咲さんと春を探してたんだ」 「……え」  僕の言葉を耳にした彼女は絶句。予想だにしていなかったのだろう。数秒人形の如く静止していたが、腰を上げ立ち上がった。
/78ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加