第一章 優しい人達

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 このなりでゲーマー驚きだ。僕以外の班員も知らなかったようで驚愕の様子を表している。 「次は私ね、私は水辺乃 春、春って呼んでいいからね。趣味は料理で特技は……」 「いつも笑顔、で決まりでしょ」  割って入って来たのは松山 りなさんだ。 「それ特技でも何でもないよー」  一区切りついたところで全身日に焼け気味な四方田 匠くんが話を振ってくれた。 「最後は久崎番だ」  軽く背中をどつかれてたっぷり噎せてから紹介を始める。 「僕は久崎 涼。趣味は……」  班員の視線が僕に集中している。視線を向けられることに慣れていないため心臓の鼓動は高まり息苦しい。数舜ののち膝の上に置かれた左手が温かく包まれる感覚に陥る。注視すればそれは春の手で隣を見やると瞳で「大丈夫」と言われているようだった。 「趣味は読書とゲーム? だと思う。特技は空手」 「もしかして久崎くん空手部なの?」 「そうだけど」 「知らなかったー」 「ねえねえ涼はどんなゲームするの? 咲はどのジャンルも好きだよ最近はギャルゲーと格ゲーをよくやってるよ」  いきなり呼び捨て……他の人と違って距離の詰め方が突然だ。 「こーらぁ、咲。いつもの癖出すのやめなさい久崎くんが困ってるじゃない」 「えーでもぉ」 「僕は平気だから」 「ほら涼が言うんだからいーのいーの、さっきの続きだけどぉ」 「アクションと格ゲーメインだよ」 「そっち系か~」  今度は一人でうんうん唸りだした。 「よーし、自己紹介も終わったことだしバスの座席でも決めるか」 「そうね早くしないと授業終わりそうだし」  こうやって話を聞いていると思ったよりいい人達そうだ。 「あたし酔いやすいから窓際でもいい?」 「いいぜー」  どうやら松山さんは左側の窓際で決まったらしい。なぜか当り前のようにとなりに四方田くんの名前が記入されていた。残されているのは右側の席二つと補助席のみとなった。 「ごめーん、咲もバス酔い酷いんだぁ。だから咲も窓際でいいかな?」 「僕は構わないけど」 「私も」  こうして座席は残り二つとなったわけだけど。 「涼どっちがいい?」 「僕は補助席でもぜんぜん大丈夫」 「でも、座りごごち悪いよ。それに補助席だと普段酔わない人でもたまに気分悪くなってる人見るし」
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