第一章 優しい人達

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 どうやら春は僕を通常の座席に座らせたいらしい。自分は酔いやすい癖にどこまでお節介なんだ。 「涼、咲の隣にすればゲームの話できて楽しいよ」 「あ、ちょっと待って」  僕が曖昧に返事をしていると春は松山さんに近寄ってペンと紙を受け取ってさっさっと記入していた。 「やっぱり私咲の隣にするね」 「あ、うん」  普段通り笑顔だが何故だが冷たく感じさせた。 「なぁーんだ、涼じゃないのか」 「私じゃ嫌だった?」 「そんなことないよ、咲は春好きだもん」 「そう、良かった」 「よし、俺達の班は終わったみたいだし解散していいぞ」  周りを見渡すといくらか終わっている班もあって机を元の位置に戻している。僕もそれに見習って指定の場所に移動する。もうやる事もなく手持ち無沙汰だったから次の授業の準備をしていたら突然後ろから肩を優しく叩かれた。僕に話しかけてくるのは春しかいないから最初はそう思ったけど、振り返るとそこには想像もしない顔があった。 「涼もっとゲームの話ししようよ、あれじゃあ足りないよ。咲の友達にゲームやってる人がいなくて今まで寂しかったんだよ。その分これからは涼に話すから覚悟して」 「えと、篠崎さんほど詳しくないよ」 「いーのこれから教えれば問題ない問題ない。それと、篠崎さんじゃなくて咲って呼んで皆そう呼ぶから」 「これからはそうするよ、咲さん」 「うん、よろしい」  そこで切りが良いのか神様の救いなのか先生が最後に話があるとかで皆着席させられた。  放課後、部活の帰り道さすがに初夏だけあって日は明るいし暑苦しい。ワイシャツべとついて気持ちが悪い。替えのワイシャツを持ってこようともしたけど、そうしたら僕は明日上半身裸で登校せねばならない。そんな事は避けたいししたくもない。ハンカチで首筋の汗を拭っていると副班長の四方田 匠くんと遭遇した。彼は自販機の前でコーラを美味しそうにあおっていた。回収ボックスに入れた時には僕に気付いた。僕もコーラ買おうかな。 「やあ、久崎部活の帰りかい?」 「そうだよ」  よっぽど訊きたそうな眼をしていたのか見透かされてしまった。 「俺か? 俺は……さっき彼女に振られたんだ」 「そうなんだ」  こんな暗い話振られてもどう返していいか判らない。
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