第一章 優しい人達

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励ました方がいいのかな。でも、彼女居ないくせに俺の気持ちが解るかかとか言われそうだし。 「気にすんな久崎が気にする必要は無い、いつものことだ」  四方田くんが微笑を張り付け場を和ませてくれた。気遣わせちゃったな。 「久崎はどうしてこの時間に?」 「部活の帰り」 「そか、お疲れ」 「じゃあ僕はこれで」 「待て待て、せっかく同じ班になったんだから一緒に帰ろうぜ」 「はあ」  僕達は同じ進行方向に向かって進み出した。心臓の鼓動は早鐘しているなんたってクラスの男子と帰るのなんて初めてだから。 「俺さお前みんなと居るの嫌なのかと思ったけど違うんだな」 「えっ」 「だってさ、今日の一限目楽しそうに話してたじゃんか」 「そんなつもりは無かったんだけど」 「少なくとも俺にはそう見えた、久崎本当は皆と喋ったり笑いあったりしたいんじゃないか?」  僕が? 今の心境から考えればクラスの人たちは怖く目に映るんだよね。 「とりあえずさ、今度の親睦会目一杯楽しもうぜ」 「そうだね」 「俺はもう久崎のこと友達だと思ってんだからさ」  その後分かれ道まで最初は他愛の話で盛り上がっていた。中盤に差し掛かり主に四方田くんの過去を吐露してくれた。予想以上に女子とは付き合ったり別れたりの繰り返しだという。数えれば十人を超すとか。僕はそれを聞いて驚いた口が塞がらなかった。さらに四方田くんは深いところまで話をしてくれた。それは、驚く事に母親は五年も前に他界して父親と妹の三人ぐらしなのだとか。父親は仕事をしている時はかっこいいけどアルコール中毒らしく酒を飲むと妹さんにすぐ手を出す為、妹さんは父を酷く怖がっている。そんな中妹に手をあげる父との間に割って入ることが多くその所為かよく懐かれてるらしい。僕の家は一般的な家庭だった。だからこの話を耳にした時はまるでフィクションじゃないかと疑ってしまった。しかし、四方田くんのあまりの真剣な瞳がそれを許してくれなかった。
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