第一章 優しい人達

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「俺こっちだからまたな、今日喋ったこと誰にも言うなよ」 「言わないよ」  四方田くんと別れ数分で家に着いた僕は自室のベットに寝そべって先程の内容を脳内で反芻していた。本当のに小説や漫画みたいなことあるんだな。考えてみれば幼馴染みの春だって昔は身長は高くても容姿が並み以上だったから、男子からは言い寄られ女子からは嫌悪の眼差しを向けられるって聞いたことがあったな。それに比べたら僕なんて友達が居ないだけで他は一般的というか面白みがないというか。あっ、今は四方田くんが友達になってくれたんだっけ。でも、本人からしたら辛いだけなんだろうな。そんな、自分の周りが暗いオーラが出始めたころ。蹴破るかのように扉が開いた。 「うわ、な、なに?!」 「私だよ春」 「何だ春か驚かせんなよ」 「別に驚かせて無いよ、何? もしかしてエッチな本でも読んでたわけ」 「ち、ちげーよ」 「久しぶりに調査でもしようっかな」  春は腕まくりをしてやる気まんまんだ。かつて、こいつに僕は調査と称して部屋を荒されエロ本を捜されまくった思い出したくもない黒歴史がある。 「……頼むそれだけはやめてくれ」 「わかってるよー冗談、今日は夕飯を御馳走して貰えるらしいの」 「へー、両親帰ってこない日だっけ?」 「そうよ、ママが涼のお母さんに昨日の夜に連絡したんだって。しかも……お泊りもさせてもらえるだって、どう? 嬉しい」 「一緒に食べる事も泊まっていく事も多いからもう慣れたよ」 「何それ、素直に嬉しいって言えばいいのに照れ屋なんだから」 「照れてねーよ」  春は両親共働きで家を空ける事が多くそれで家に夕食を食べに来たりそのまま泊まったりと何年も前から続いている。今はもう高校生になったんだし親も平気だろうって言ってるらしいのだが春は頼み込んで今の状況が継続している。僕の両親は春も昔から知ってるから自分の様に可愛がってるから全然構わないのだそうだ。春の両親もそれならお願いしますとかわりに条件として泊りに来た際は手伝いは好きに扱き使って下さいと頼まれたと聞いた。それでも、春は家に来ると何も言われなくても料理の手伝いはするから僕の両親としては問題無いのだとか母さんと父さん何か僕じゃなくて子供は春ちゃんみたいな子が欲しかったとよく口にしている。
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