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翌朝。俺の目に映った空は雲一つなく青緑に染まっていた。
周囲を見渡すと、この一帯は俺の身長の二十倍程度の直径を持った円形の平面と、それを取り囲む岩壁であった。昨日穿った穴を除き、俺をここに閉じ込めようとしているようである。もっともこの穴も他に通じなければ同じだが。
――さて、一体どうしろというんだ? まさかこんな所で飢え死にしろ、なんていう事はないだろう?
そんな馬鹿な事はない。同じ死ぬなら、指をくわえて待っているのではなく、どうにかしてここを抜け出す努力をしながらの方が良い。勿論死なずに脱出出来るならば尚良い。
昨晩と同じく湧き水で喉を潤し、野草で空腹を凌ぐ。幸いにして一週間は食い繋いでいけそうである。
――それよりも、ここをどうやって抜け出すか、だ。
昨日の窖はあまりにも暗い。神経を研ぎ澄ませばどうにかなるのは覚えたが、それにしたって全貌の見えない暗黒世界を無闇矢鱈と進んでしまっては遭難しかねない。そうなると本末転倒ではないか。
下が駄目なら上である。見る限りこの岩壁は身長の十倍といったところか。しかも岩場は手足を掛けるのに十分な程の出っ張りがある。何ヶ所かには洞も見え、中休憩には足りそうであった。
――なら登る方がいいな。だが……
決めかけて、悩む。記憶がないから定かではないが、俺は崖登りの経験などあったろうか。失敗して転落すれば、きっと一巻の終わりだ。こちらとて、安牌ではないのである。
――下を抜けるか、上に挑むか。はてさて、いずれが得策か……?
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