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気が付いてみれば、俺は暗い窖の中にいた。光のない真暗闇、その中にいた。何故そこにいるのか、またここに来る前は何をやっていたのか、それは記憶の遥か向こう側に置き忘れてきたらしい。
――ここは何処なんだ?
足元は堅く、岩石質の地面である事は想像に難くない。かつ手を横に伸ばしてみれば、これまたひんやりとした粗い岩の感触があった。人工か天然かは知らないが、洞窟であるのは確からしい。
――俺は誰なんだ?
かく考える俺は、自分が何者なのか、どのような素性なのか、それについて一切合財を知っていなかった。生きているのか死んでいるのか、そもそも自分が人間なのか獣なのかも曖昧である。
――俺は何の為にここにいるんだ?
事故か、何らかの意志なのか、それとも最初から俺はここの住人だったのか。記憶を失った俺には知る手立てがないが、少なくとも一つだけ確かな事はあった。俺は、間違いなくここにいる。
だが、それは存在としてなのか、それとも意識だけなのか。はたまた“ここ”も“俺”も全て作り物で、現実には皆まやかしなのではないか。
――……否、この際どうでもいい。それよりもどうやってこれから在り続けるべきなんだ?
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