第一章 香川 慶太

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曇っていた空は更に雨雲を厚くし、次第にポツポツと小雨が降り注いでくる。傘を持っていない俺は走ることもせず、堂々と雨に打たれながら家を目指して歩いていく。 数分後、見慣れた薄汚いアパートが目に映る。錆び付いた階段を上り、一番端にあるドアの前で立ち止まる。ポケットから鍵を取り出して開くと、玄関には生ゴミの入った青い袋が無造作に置かれていた。 小さく舌打ちをした俺は、靴を脱いで台所の椅子に勢いよく座る。ダイニングテーブルの上には五百円玉と汚い字で書かれた手紙が置かれていた。 【慶太さんへ 今日はこれで食事を済ませてください。あと、玄関にゴミをまとめておいたので、明日の朝に出してください。 峰岸】
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