第一章 香川 慶太

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俺が中学生になった頃には、既に家庭環境は崩壊していたのかもしれない。会社をクビになった父は仕事も探さずに昼間から酒を呑み、暇さえあればギャンブルに没頭していた。 家に居る間は俺や母に暴力を振るい、夜の仕事をして貯めた母の金をむしり取って出て行く。人間の皮を被った鬼とはまさに父の事だろう。 その父にも優しい時期はあった。俺が小学生の頃、休みの日には俺が行きたいと言った場所へ必ず連れて行ってくれた。父が母を殺すときに見せた恐ろしい表情はその頃には無く、周りを和ませる優しい笑顔をいつも俺と母に向けていた。
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