第六章 砂時計

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8:21 黒岩に呼び止められた慶太は廊下で立ち止まる。 「香川、お前なんかあっただろ? いつもより目力があるぞ」 慶太の肩に腕を乗せて嬉しそうな表情で話しかける黒岩。 「いきなり妙な絡み方するのやめてくれませんか? 俺は別にいつもと何も変わっていないですよ。 むしろ大雨で憂鬱なんすから……」 「いや、先生の目はごまかせないぞ! 好きな人でも出来たんじゃないか? まぁ、お前が少しでも明るくなってくれるならそれに越した事はないけどな」 笑っている黒岩の背後を通っていく彩乃と千沙の姿に気づいた慶太は、気まずい表情で目を逸らす。 「おっ、なんだなんだ? もしかしてさっき歩いて行った女子の中に好きな人が居るのか? おいおい、お前も隅におけないな。 まぁ、高校生は高校生らしい健全な恋愛をするように」 慶太の頭をポンポンと軽く叩いた黒岩は笑いながら彩乃と千沙が居る教室へ入っていく。 頭を擦りながら深い溜息をついた慶太は、疲れた表情で自分の教室へ入った。
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